実施事業

1.活動の様子

〜 やりたいことを形にできる場所をつくる。自分で決めて、みんなでつくる。〜

相互作用による、豊かな時間
  • 過ごす部屋を合わせる

    今年度をスタートするにあたり、昨年度こども達と一緒に過ごした様子をふりかえりました。それぞれのやりたいことや関心の幅広さに合わせて、こども達がより活動しやすくなるよう、部屋のレイアウトを変更することにしました。

  • スタッフルームをこども中心の場所に

    まずは、スタッフルームのレイアウトを変更しました。これまでのスタッフルームは、こども達がいつでもあそびに来ることができるものの、スタッフのデスクがある職員室のような雰囲気でした。こども達があそびに来てくれる時に、その時間を大切にしたい、もっとこども達中心の空間にしたいと思い、デスクや事務作業関連のものを別室に移しました。そして、空いたスペースにカーペットやソファーを置き、こども達がくつろぎやすいようにしました。また、こども達同士で交流がしやすくなるように、みんなであそべるカードゲームを増やしました。その後、スタッフルームはこども達が集まりリラックスする部屋として活用されるようになりました。

  • こども達の声を部屋に反映する

    スマイルファクトリーでは、スタッフルームやプログラムで活用する大人数教室の他に、個室やパーティションで区切られた部屋など、過ごし方に合わせて様々な部屋が活用されています。部屋の活用のされ方はこども達の過ごし方に合わせて毎年変えているのですが、今年度はそこに一工夫加えてみました。こども達がそれぞれの部屋についてどのようなイメージを持っているのかを尋ねてみるため、午後のプログラムで、部屋の名前とピクトグラムを募集してみました。こども達からはゆっくりする部屋、みんなで遊ぶ部屋、やりたいことに集中する部屋といった声がたくさん聞かれました。そこで、他の部屋についても、デザインやレイアウトを合わせていくことにしました。

  • 目的に合わせやすい部屋をつくる

    活動の中心で使う教室の隣は、広くスペースを取り、制作や少人数の活動で使いやすいレイアウトにしました。パーテーションで区切られた個室には、集中して勉強しやすいように机と、ゆったり過ごせるようにソファーを置きました。部屋の用途を広げたことで、絵を描いたりや工作をしたりなど、やりたいことをしやすい空間として活用されるようになりました。また、静かに過ごしたい、ゆっくりしたい時にも、活用されるようになりました。

  • 地域の方々にも居心地のよい場所をつくる

    スマイルファクトリーは、休校になった旧池田市立伏尾台小学校の2階で活動(3階はスマイルファクトリーハイスクールが活動)していますが、1階部分は、地域の方との交流に使われています。今年度はエントランスのレイアウトを変更し、ベンチやドクターフィッシュの水槽を置くことで、地域の方々にもくつろいでもらいやすくしました。

    1階には軽食やお茶が楽しめる「スマイルカフェ」もあり、連日こども達や地域の方々で賑わっています。今年度はカフェの設備を拡充し、軽食だけでなく、日替わり定食や手作りデザートも出せるようになりました。日替わり定食は好評で、こども達は毎朝メニューの発表を楽しみにしています。

    • 体育

      1度のプログラムで複数のスポーツやレクリエーションを実施し、関心のあるものを選択する形にしました。こども達は、全てに参加したり1つのスポーツをやり続けたりしており、それぞれのペースで活動していました。中には、どれも違うということを確かめた上で今自分がしたい別の運動を見つけ、夢中になっているこども達もいました。こども達自身が自分でやりたいことを決め、無理なく自分のペースで体を動かすことを楽しんでいる様子でした。また、初めて会ったこども達が体育をきっかけに仲良くなるなど、体を使ったあそびを通して交流が深まる様子も見られました。

    • 美術

      きれいではなくうつくしいもの、をテーマに、毎回思い思いの作品をつくっています。今年度はそれぞれの作品づくりやイベントの飾り付けづくりに加え、段ボールで大きなサボテンをつくり、スタッフルームに飾りました。また、スマイルファクトリー版の人生ゲームをつくってみんなで遊んだり、人生ゲームの中で保険について学んだりしました。スタッフが語る架空の物語を伝聞して想像した“伏尾の主”を描くこともしました。こども達は作品づくりを楽しむだけでなく、自分以外の作品についても面白がり、つくった人の想いを大切にしていました。

    • 家庭科

      新型コロナウイルスの感染予防対策を十分に行った上で、調理実習を行いました。お弁当づくりをテーマに、主食や主菜、副菜をつくる班に分かれて行いました。どのようなお弁当にするか、みんなで決め、レシピ本を見ながら各班でメニューを検討しました。予算を頭に置きながら細かく材料について考える班や、なるべく簡単につくれるメニューを探す班など、それぞれ大切にするポイントは違うものの、熱心に話し合っていました。当日は決まったメニューに加え、余った材料で何品かつくる子もおり、賑やかな昼食となりました。

  • プログラムを合わせる

    午後のプログラムは「体験すること」を中心としており、異年齢のこども達が一緒に活動する中で、それぞれが自分のペースで楽しめることを大切にしています。今年度は、こども達の主体性がよりいっそう発揮されやすくなるよう、テーマと材料(使うもの)はあらかじめ設定し、内容はこども達と一緒に決めていくという形をプログラムの一部に取り入れました。

    プログラムを通して、こども達は自分自身の興味関心を深めたり広げたりしたようでした。また、好きなことでつながって友達が増えたり友達が好きなものが好きになったりする様子も見られました。こども達同士の相互作用によって、豊かな時間となりました。

    • 学習サポート会

      スマイルファクトリーの午前の活動は、それぞれのペースで今関心のあることに取り組む個別学習の時間になっています。今年度はもっと集中して勉強したい、スタッフにたくさん教えてほしい、という希望が多かったため、スクーリングのない日に予約制で少人数の学習サポート会を開くことになりました。参加するこども達は、静かな部屋で長い時間集中して取り組んでいました。また、友達の参加に刺激を受けて参加するこどもも多く、和気あいあいとしながらも、それぞれ自分のやることに集中して取り組んでいました。

    • ワークショップ

      夏休みには、普段より一歩踏み込んだ内容のプログラムを実施しました。ペットボトルロケットの実験や水遊びなど水を使ったものやエコバッグづくり、廊下の壁に絵を描くウォールペインティングなどを行いました。壁に絵を描くことにこども達は最初とまどった様子でしたが、やりだすと色を混ぜたり型を使わず描いたりと、それぞれが楽しみながら参加していました。また、リクエストの多かったダンスレッスンを地域の方に担当していただきました。ダンスのレッスンは好評で、夏以降も午後のプログラムとして実施しました。

    • 季節のイベント

      秋の「スマイルフェスタ」や冬の「クリスマス会」では、これまで通りこども達が主体になって設営や準備を行いました。フェスタでは、準備からよく話し合って、1 からブースの形をつくりました。フリーマーケットで値札のつけ方を工夫して会計をスムーズにできるようにしたり、カフェブースでメニューに和菓子を取り入れたりと、新しい工夫を加えていました。クリスマス会では、飾りつけや楽器演奏、ケーキづくりなど、自分たちのやりたいことに分かれ、協力して準備をしました。夏のワークショップから始まったダンスはクリスマス会でも披露され、会場を盛り上げました。

2.地域との交流

〜 多様な機会を共に過ごす 〜

密に連携をとり、こども達に寄り添った居場所をつくること

池田市立山の家で活動をスタートさせたスマイルファクトリーは、現在、旧池田市立伏尾台小学校に場所を移して活動しています。伏尾台地域の方々がスマイルファクトリーの活動をあたたかく見守ってくださっているおかげで、こども達ものびのびと過ごすことができています。「地域の方々との交流がもっと増えたら、こども達の過ごす時間がより豊かになるのではないか。」と思い、イベントや季節の行事だけでなく、日々の活動にスタッフとして参加していただくことにしました。

今年度は、毎日2名ほどの地域の方がスタッフとして加わってくださり、こども達と一緒に過ごしていただきました。あそびや勉強を通しての交流に加え、スポーツや音楽、生き物飼育といったそれぞれの専門性に基づいた関わりもあり、こども達の興味関心が広がった様子が見られました。また、午後のプログラムの担当や、ダンスのレッスンをしてくださることもありました。地域スタッフとの交流は、こども達が自分の好きな時間を増やす機会となったようでした。

1階のスマイルカフェでも、地域の方々がスタッフとして加わってもらっています。こども達の様子を見守ってくれていることもあってか、カフェは飲食をする場所だけでなく、休み時間や放課後に過ごす居場所にもなっています。また、カフェのスタッフとスマイルファクトリーのスタッフが、こども達の様子を共有するミーティングを定期的に実施しました。双方の視点から見えたこども達の様子についてディスカッションすることで、こども達への理解を多角的に深めることができるようになりました。

イベントでの交流は、今年度もたくさんありました。初夏にはじゃがいもの収穫や田植えを体験させてもらいました。これまでは一人で過ごすことが多かったこどもが、課外活動を通じて周囲との仲が深まり、それ以降みんなと過ごすことが多くなった、ということもありました。秋にはさつまいもを地域の方と一緒に掘りました。地域の方が「私らがこどもにあそんでもらってる」とおっしゃっていたことが、スタッフとしては印象に残っています。また、年に1度地域の方をお招きして開催しているイベント、スマイルフェスタでは、今年もたくさんの地域の方が来てくださいました。

こども達が過ごす日々を豊かにしていくという意味では、こども達が所属している原籍校、池田市教育センターとの連携も欠かせません。原籍校とスマイルファクトリーが連携をとることで、それぞれの強みを活かした環境が構築でき、こども達や家族がニーズに合わせて活用できる状況をつくることができています。また、池田市教育センターとスマイルファクトリーが連携をとることで、自治体の基盤に支えられた上で民間機関が持つ柔軟性が発揮でき、こども達に寄り添った居場所をつくることができています。

地域の方々と一緒に活動することで、こども達は多様な大人と過ごすことができ、たくさんの価値観にふれられる体験ができました。また、スタッフにとっても地域の方々とこども達について考えることでスマイルファクトリーを俯瞰的に見ることができ、新たな気づきを発見することができました。