連携会議について

連携会議について

多様な教育機会を地域で実現していくには、どのような仕組みが必要か。テーマを追求していくために、昨年度に引き続き、全3回の連携会議を実施しました。池田市教育センターとスマイルファクトリー、長年教育現場に携わってこられた方々にも加わっていただき、意見交換をしました。

連携会議(2021年)

【会議参加者】※敬称略

  • 山田 智司(池田市教育センター 所長)
  • 戒能 千恵(池田市教育センター 副所長)
  • 宮前 孝雄(元池田市小学校校長)
  • 栗田 拓(特定非営利活動法人トイボックス 代表理事)
  • 田畑 優介(特定非営利活動法人トイボックス)
  • 第1回
    2021年8月6日(金)

    テーマ:活動報告と地域連携について

    主な内容

    • 今年度事業の目的の共有
    • 今年度の活動内容の報告
    • 時代に即した学びの場の構築に向けて
  • 第2回
    2022年2月25日(金)

    テーマ:多様な教育機会の地域での実現に向けて

    主な内容

    • フリースクールの機能に生じている変化について
    • 地域連携と住み分けについて
    • 政策、枠組みを見直す必要性について
  • 第3回
    2022年3月4日(金)

    テーマ:今年度のふりかえりと来年度の方向性の確認

    主な内容

    • 活動の様子から見えたことについて
    • 活動を地域に広げるためにできること
    • 目標を伝えるための表現方法について

第1回では、時代の変化に伴う学びの場の変化をテーマに、様々な意見が出ました。また、こども達が学ぶ環境を整備していく上で、地域の方々の存在が大きな支えとなっていること共有され、地域一体となっていくことの重要性が改めて確認されました。

第2回では、第1回の内容について、より踏み込んだ議論がなされました。フリースクールの役割が学校復帰のつなぎとされる場所から個々の目標に合わせた活動ができる場所へと変化してきていることについて、フリースクールが寄与する目的を見つめ直す必要性が話し合われました。フリースクールが寄与する目的を考える上で地域の様々な資源、専門機関について理解を深めて住み分ける必要性があることや、周囲への理解を深めることが、フリースクールの独自性を深めることにつながることなどについても、意見交換が行われました。活動を持続可能なものとしていく予算や枠組みについては、行政と民間が連携、分担をしながらめざしていくこととなりました。

第3回では、第1回、第2回で協議した内容をふりかえり、仮説を実践検証して分かったことを整理しました。その結果、多様な学びの場の実現をめざし、地域の方々や専門機関が連携した教育プラットフォームをつくることを来年度の目標としました。

全3回の連携会議を通して、フリースクールの機能や地域の方々の存在の大きさ、行政と民間がそれぞれの強みを活かして仕組みづくりを協働していくことについて、協議することができました。
特に、多様な学びの場を形成するためには、様々な機関が連携して地域一体となっていくことが重要である、という結論が出たことは、活動を広げていく上での大きな進展だったように思います。
連携会議でディスカッションされたことは、こども達と過ごす環境を、よりこども達に寄り添ったものにするための指針となっています。

連携会議(2020年)

【会議参加者】※敬称略

  • 大賀 健司(池田市教育センター 所長)
  • 戒能 千恵(池田市教育センター 副所長)
  • 白井 智子(特定非営利活動法人新公益連盟 代表理事)
  • 宮前 孝雄(大阪府教育センター 小中学校教育推進室 学力向上推進グループ)
  • 栗田 拓(特定非営利活動法人トイボックス 代表理事)
  • 廣瀬 順子(特定非営利活動法人トイボックス スマイルファクトリー チーフ)
  • 田畑 優介(特定非営利活動法人トイボックス スマイルファクトリー サブチーフ)
  • 第1回
    2020年10月14日(水) 11:00 - 12:00
    池田市教育センター

    テーマ:活動報告と来年度にむけて

    • 今年度の活動内容の報告
    • 行政と民間機関との連携の重要性
    • 予算の安定・人員配置・仕組みの模索
    • 地域での位置づけ、機能の整理
  • 第2回
    2021年2月16日(火) 10:30 - 12:00
    スマイルファクトリー 1Fスマイルカフェ

    テーマ:ウィズコロナにおけるフリースクールの機能と多様な教育の場の在り方

    • 池田市とスマイルファクトリーの取り組みを発信していく
    • 公設民営の居場所が普及する方法
    • 教育機会確保法の見直しに際する予算面の重要性について
    • タブレットやオンラインツールといった学びの幅を広げる手立てと活用方法
  • 第3回
    2021年3月17日(水)
    オンライン

    テーマ:仮説の検討と実践検証にむけての方向性の確認

    • 地域との交流における学びについて
    • 個別学習の在り方について
    • 検証方法の検討
    • ビジョンを伝える表現について

第1回からは、地域で寄与できることを考える上で、まずフリースクールが自身の強みや特色を整理することの重要性が見えてきました。そして、一人ひとりのニーズを実現していく場を整備するには、人員や予算といった環境面を安定させることが必要であることが確認されました。

第2回では、教育機会確保法の成立背景や他の地域での動向についてもディスカッションを行いました。全国的な動向やこれまでのスマイルファクトリーの活動について話し合う中で、池田市がスマイルファクトリーの存在に理解を示してくれていることは、教育機会確保法の事例として画期的なことだということが共有されました。また、公設民営のような形の居場所が増えること、教育機会確保法を軸にした多様な教育機会の場が広がっていくには、予算面は重要な側面であることが再認識されました。

第3回では、第1回、第2回でディスカッションした内容を整理した上で、ここまでの活動から見えてきた目指す目標と来年度に向けた方向性について話し合いました。メンバーからは、異年齢間の交流や地域との交流が非常に重要になってくるだろうという意見が出ました。
また、こども達の様子を見守る、一人ひとりを尊重して関わるといった日々の実践をより一層ていねいにしていくことが、実践検証をしていく上でも大切になってくるという意見も出ました。

検討から浮かび上がったキーワード

連携会議のメンバーでディスカッションしたことを基に考察を重ねた結果、多様な学びの実現のために必要な要素として、以下のキーワードが浮かび上がってきました。

  • 1
    居場所としての役割
  • 2
    カリキュラムの多様性
  • 3
    12を支える環境としての制度、枠組み、予算

1は、スマイルファクトリーで過ごすこども達の様子から、フリースクールが持つプログラムの柔軟性や自分のペースで多様な人たちと交流できるといった側面が、こども達が安心して過ごせることにつながっているのではないか、と考えました。

2は、フリースクールの活動内容に着目しました。学問的な学びだけでない体験や人との交流も含めた多角的な学びの機会をフリースクールが担うことが、地域の中で学びの多様性を広げることに寄与できると考えました。

3については、12が安定して保障されるには、予算面の安定が重要であるといった観点から着目しました。これは、フリースクールだけでなく、地域との連携があってこそ成立する要素であると考えています。

浮かび上がってきた3つのキーワードは、フリースクールの機能として考えられるもの(12)と、フリースクールと地域の連携によって成り立つもの(3)の2つに分類できそうです。
この分類に沿って、多様な教育機会の提供を地域で実現していくために必要な仕組みは何なのかを明らかにするために、それぞれについての仮説を組み立てました。

  • Aフリースクールの持つ居場所機能とは何を指すのか:
    構成要素を明確にする(キーワード12より)

    スマイルファクトリーの活動では、体験をベースにした多様なプログラムを重視しています。
    また、学年や持ち味の違うこども達が一緒になって過ごしていて、共に過ごすスタッフも、様々な専門性や多様な価値観を持っています。自分と違う多様な価値観を持った人々と過ごすということは、自分に合うことを見つける機会として、もしくは自分に合わないことを確認して見つめていく機会としの機能がある、といえるのではないでしょうか。

    自分への理解を深めることは相手への理解を深めることになり、自他への理解を深めることが違いを認め合い、楽しみ合うことにつながる、と考えています。そうした機会をより意義深いものにしていくには、多様な価値観にふれ、自分の世界観を広げていけるようなプログラムと、それを共にする自分とは違う他者の存在が大切になってくるでしょう。また、そうした体験は、おとながこどもに教えるという一方向の学びではなく、おとなもこどもも互いに学び合うことで実現されるのではないでしょうか。この仮説については、実践を通しての検証と考察をしていく中で、機能や構成要素がより明確にしていきたいです。

  • B安定した基盤づくり:
    多様な学びの場に必要な予算が配分される仕組みを追求する(キーワード3より)

    キーワード3からは、多様な教育機会を構成する要素としての居場所やカリキュラムを充実させていくには、子どもたちをサポートする環境整備を行う必要性が示唆されました。
    まず私たちが検討したのは、公立学校との連携をさらに強め、フリースクールが公立学校の分校のような位置づけになること、でした。こうすることで、人や予算といったリソースの流れが活性化し、より多様で豊かな教育機会を提供できるのではないかと考えました。しかし、この形では、活動が公立の学校に準拠することになります。そうすると民間のフリースクールが持つ活動の柔軟性を有しづらくなり、地域の中で多様な教育機会を提供するにはその特色を発揮しづらくなることが懸念されました。

    フリースクールの柔軟性を残しつつ安定した運営基盤をつくるにはどうしたらいいか。協議を重ねた結果、以下の仮説にたどり着きました。小学校、中学校の義務教育を1人のこどもに届けるために必要な費用を、フリースクールを選択したこどもに関してはそのスクールに提供する、というものです。現在の自治体に教育予算が分配される交付金の仕組みのもとではこの實現は難しく、教育予算はこども達ひとりひとりのためのものという発想のもと、国の根本的な制度改革が必要と考えます。この仕組みが実現できれば、こども達やご家庭が自分たちのニーズに合った場所を選び、その場所に安心して通い続けることができる環境を保障することができるのではないでしょうか。一人ひとりが自分に合った場所で自分にあった形の教育を受けられるために必要な予算を確保し、安心した学びの場を支えることが必要だと考えています。
    この仮説を検証していくには、居場所機能を持ったフリースクールとはどういうものなのか、という基準を示す必要があるでしょう。しかし、活動の柔軟性が高いからこそ、居場所としての構成要素を示すことは大変難しいことでもあるように感じています。つまり、ABの仮説は相互に関連しており、安定した運営基盤を実現するための仮説を検証していくことで、 居場所としての特色も明確になっていくと考えています。

今後の取り組み

今回立てた仮説は、おそらくこうだろうか?という現段階での方向性です。仮説を基にした実践をしていくなかで、この仮説を確かめていくことが必要です。スマイルファクトリーの活動を通して、教育機会確保法を検討の軸としながら、以下のとおり実践と検証をしていきます。

  • 日々の活動のなかで、こども達の多様性が発揮される場の構成要素を整理する。
  • プログラムにアクティブラーニングの要素を盛り込み、自他理解や相互理解を深めるための構成要素を整理する。
  • 地域の方々と連携し、プログラムを通して地域で学び合う機会を増やす。
  • 池田市との連携をより強め、引き続き地域で多様な学びを提供する仕組みを協議する。
  • 官民連携のモデルについてイメージしてもらいやすくなるように、情報発信を行う。

学び合うことを大切にした地域を目指していくために何が必要か。多様な学びの場を広げていくためには何が必要か。スマイルファクトリーが活動していく中で、こども達に多様な学びの環境を整えていくための仕組み作りの要素を見つけ、道筋を立てていきたいと思います。